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友人はおろか知人とすら言えない程の浅い間柄ではありましたが、それでも身近にいた人間がこの世からいなくなってしまうのは本当に残念なことです。まして自ら命を絶ったのですから、こんなに悲しいことはありません。
当人とはこんな程度の関係でしたから、きっと忙しくしていればこの件は頭の中から無くなるでしょう。しかし何もせずぼんやり過ごしているとどうしても考えてしまいます。そして思うのです。何故彼は死んでしまったのかと。

彼と語り合ったわけでもなく、まして日常的な会話ですらほんの少ししか交わしたことはなかったのです。だから彼が心の中にどんな闇を抱えていたかなど知る由もありません。しかし昨日の朝、即ち彼が命を絶った当日に、もしかしたらこれに繋がってしまったのではないかという一つの出来事が、私の目の前で起こっていたのです。
噂話を一つ聞いていました。私がグラン那覇に泊まりに行っている間に、自殺したその彼がアニキに説教されていたらしいと。アニキと呼ばれているのは私の親くらいの年齢で、老後の楽しみに大好きな釣りをするために沖縄にやって来てけらまに泊まっている、長期連泊者の一人です。物言いは少々乱暴ですが、裏表のない豪気なお爺さんです。初めのうちは弟さんと二人で来ていたのですが、弟は先に帰って行きました。私はその弟の方と先に打ち解けたのですが、去り際に残していった言葉が強く印象に残っています。
兄貴は今まで苦労して仕事ばかりしてきた人間で、漸く自由な時間を手に入れた。俺が帰ったら一人ぼっちになってしまうから、兄貴と仲良くしてやってくれ、話し掛けてやってくれと言うのです。
そういう人から見れば、本来働き盛りである筈の年齢でありながら毎日朝から酒を飲み、カップ麺ばかりを食べている人間は見ていてどうにももどかしかったのでしょう。そして実の弟にとはいえ、こんなことを言わせる人間に悪者はいません。毎日そんなことばかりしていないでしっかりしろ、何処かに出掛けるなりしろと彼に説教したのも、悪気や自己満足からではなかったのでしょう。

しかしこの世は哀しいもので、どんなに良かれと思っていても当人にとっては迷惑でしかない事だって多くあるのです。そしてアニキは少々しつこかった。あの朝、私が談話室に入ると彼とアニキがいて、そしてやはり彼は既に酒を飲んでいました。そしてアニキが彼を盛んに誘っていたのです。今日も釣りに行くから一緒に来ないか、教えてやる。それとも車で出るから残波岬にでも連れて行ってやる、どうだと。
彼は当たり障りのない生返事をしていましたが、明らかに興味がなさそうでした。いやそれどころか、アニキは彼のためを思ってのことなのも明らかだったけれど、それでもそれは彼にとって迷惑でしかなかったであろうことも、私には見て取れました。よく分かるのです。私もこうやって必要以上に立ち入って来る人間が大嫌いですから。
それでも私は自分の行動にも言動にも自信満々な人間ですから、興味がなければ明確な論を持ってはっきりと断ります。が、それが出来なくて、そしてこうして干渉されることで負担が蓄積していく人もいるのです。

勿論これだけが原因ではないでしょう。しかし、心に何らかの闇を抱えて不安定になっている人間が、一時の逃げ場、安息の地として駆け込んだ沖縄の安宿に、このように望まない干渉をしてきて負担となる同宿者が現れたとしたら…
この事が最後の一押し、とどめになってしまったのではないか。私にはどうもそう思えてしまうのです。
そんな些細な事くらいで折れてしまうような弱い人間なら死んでしまえばいい。もしそう言うのなら、私もそれと同意見です。そんな弱い人間は死にたければ勝手に死ねと思います。しかしあの朝、私の目の前で起こっていたあの事がもしなかったら、彼の命はまだここにあったかも知れない。そう思ったら、そうとばかりも言えないという気持ちになります。ほんの些細な出来事から取り返しのつかないことが起こってしまったのだという気持ちになります。そしてそれは、とても哀しいことです。

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