
以前、那覇の居酒屋を探訪するにあたってその方針に三つの柱があると言いました。そのうちの一つが教祖おすすめの老舗、名店を訪ねることですが、その一翼を担う安里の東大を漸く訪ねることが出来ました。

おでんの店ですが、内地のおでん屋からは色々な面でかけ離れており、所謂おでん屋らしい風情を連想すると良くも悪くも大いに裏切られることになります。まずいかにも沖縄らしいのは開店時刻です。店先に下げられた札には「午後九時半頃」と書かれています。午後九時半という遅さも凄いですが、そこにさらに「頃」が付くのです。今日は飲み始める時間が遅くなると言ったのはこの事でした。看板には明かりは点かず、シャッターが固く下ろされ、開店時刻直前になっても準備中の気配はまるで感じられません。本当に開くのか、臨時休業ではないのかと不安になりますが、九時半が近くなるとどこからともなく続々と人が集まってきます。
連日開店即満員の大盛況で、入店した順に注文を訊かれます。ここで最初に必ず注文しなければならないのが当店名物の焼きてびちです。これは他の店ではまず見られないもので、ただし供されるまでに非常に時間がかかります。三組目で入店したというのに、四十分から一時間かかると告げられました。おでんやその他のものをつつきながら焼きてびちの到着を待つというのがこの店での基本的な流儀です。
本当は那覇に来たらいの一番に来たかったのですが、このような状態ですから一人酒には非常に難関だと言えます。宿から遠いし、時間はやたら遅いしで、同行者をつかまえられる機会がなかなか訪れなかったというわけです。
おでんにもてびちが入ります。これを筆頭としてたいへん美味。さらに豚のハツを注文したのですがこれも丁寧な下処理がされていて美味で、箸が止まりません。カウンター席も僅かにありますが小上がりが中心で、どの卓も賑やかなゆんたくです。燗酒をすすりながら舟を覗き込み、所望するネタをぼそぼそと告げる、といったおでん屋の風情は全くありません。ここに来ると下手な沖縄料理店よりも沖縄に居ることを実感出来るのです。
ただし今回意外だったことがあります。八年ぶりの念願の再訪成ったわけですが、焼きてびちがそこまで美味いとは思えませんでした。火を通し過ぎた皮と骨の部分が殆どで、食感らしい食感、味らしい味が無いのです。悪い偶然なのか、それとも記憶の美化なのか。次回ここを訪ねる機会があるのかどうかも不明なだけに、気がかりを一つ残すことになってしまいました。

にほんブログ村

日本一周ブログランキングへ
↑ ランキングに参加しています。よろしければ二つのバナーをクリックして頂けると幸いです。ご協力をお願い致します。